ベビーフェイスと甘い嘘
目の前のテントの中で、アナウンスのマイクを握りしめて、白髪混じりでちょっとだけ恰幅のいいジャージ姿の男性がグラウンドに向かって怒鳴っている。
『ちょっと!園長先生のほうがよっぽど目立ってますよ!』
『まり子先生も声がデカイですよー』
『誰か、一旦マイク切っちゃって!』
そんな周囲の止める声までグラウンドに響いていて、みんなはテントとゴールの方を交互に見ながら笑っていた。
やがてプツッ、と放送の途切れる音がして、BGMが流れ出す。
今までの喧騒なんて何事も無かったかのように、また運動会の進行へと戻って行く中で、私は目の前の光景を信じられない思いで眺めていた。
ゴールの方からこっちへ向かって、翔と……直喜が並んで歩いて来る。
仲良く手を繋いで、二人顔を見合わせて笑いながら。
やがて二人はテントにたどり着くと、さっき怒鳴っていた園長先生と呼ばれた男の人に向かって「ごめんなさい!」と同時に頭を下げた。
「全く……お前は昔から変わらないな。こんな無理を聞いてやるのは今回だけだからな。……かけるくん、運動会は楽しかったかい?」
二人は昔からの、親しい知り合いなのだろうか。ブツブツと直喜に向かって文句を言いながらも翔に向かって微笑みかけた園長先生の表情は優しげなものだった。
「はい!たのしかったです!」
翔は、満面の笑みで返事をしていた。