ベビーフェイスと甘い嘘
「そっか。でも結果オーライだったかもね。そんな誤解された状況で話しかけたりしたら、ますます酷い噂になってただろうし。……ま、確かに不倫どうのこうの関係なく大胆だけどねー。園児じゃない子と一緒に親子でもないのに、親子競技に参加しちゃうなんて」
芽依はしばらく『ウサミ』には行っていないらしい。まるでお店で一緒に噂話をしているかのように、芽依の目はイキイキと輝いていた。
……噂ってこうやって広がっていくのね。
「直喜くん、自分の小さい頃と翔くんを重ねちゃったんじゃないかな」
すっかり井戸端会議になりかけた雰囲気の会話に、ちょっと深刻そうな表情で千鶴ちゃんが口を挟んだ。
……どういう事?
そう思いながら、二人して千鶴ちゃんを見つめてしまっていたらしい。「あんた達、顔が一緒よ」と笑われてしまった。
「私も奈緒美ちゃんからちらっと聞いただけで、詳しい事はよく分かんないんだけどさ……直喜くん、小さい頃両親に構ってもらえなかったみたいよ。だから翔くんの事も放っておけなかったんじゃないかな」
「……でもそれってさ、自営業だし、あれだけ繁盛してるお店だから仕方ないんじゃないの?」
私が心の中で思っていたのと同じ言葉を、芽依も口にした。
「……そうじゃなくてね、お兄さんのほうは忙しい中でも両親どっちかが都合を付けてくれてたらしいんだけど、直喜くんは違ってたって」
「しかも、直喜くんだけ近くに住んでるおばあちゃんの家にずっと預けられてたみたいよ。奈緒美ちゃんって小学校から勇喜くんと同級生だったから、直喜くんの事もずっと見てきたんじゃないかな」