ベビーフェイスと甘い嘘

「茜ちゃんは……ウサミナオキからそんな話聞いた事無いの?」

芽依にそう言われて戸惑う。


そんな話も何も……二人きりで出掛けたのは『still』に行った一回だけで、その時はナオキという名前が本名かどうかも分からなかった。


後は偶然会ったとか……コンビニに来た時くらいしか話してないから、お兄さん以外の家族の話なんて聞いたことも無い。


……でも、身内の結婚式を抜け出して大丈夫だったの?って聞いた時に『結婚式だろうが、何だろうが俺が急に居なくなっても、今さら誰も気にしない』って言っていた。


それって『女と二人きりでいなくなる』事に周りが慣れてるんじゃなくて、『直喜が居ない』状況そのものに家族が慣れていたんだとしたら、今の千鶴ちゃんの話も納得できるような気がした。


でも……それってずっと寂しい思いをしてきたって事じゃないのかな。


翔だってそうだ。口には出さないけど、寂しい思いをさせてしまっていたと思う。


父親と急に離れて暮らす事になって、自分の運動会は母と二人きり。いとこの家には家族が増えて、自分が出たくても出られない運動会に連れ出されて……


そんな翔の寂しさを、直喜は感じ取ったのかもしれない。
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