ベビーフェイスと甘い嘘
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ずっとしあわせになって欲しいと思っていた二人が、今日ようやく結婚する。
何度、父の言った事なんて気にしないで結婚してくれと言ったか分からない。
だけど、奈緒ちゃんだけじゃなく勇喜も『直喜のせいじゃない。これは俺たちが父さんと約束した事だ』と言って譲らなかった。
勇喜も、一度決めた事は絶対に曲げない。
野球選手になる道をあっさり諦めて進学した時は、奈緒ちゃん以外の皆が驚いた。
『俺はプロにはなれない。上には上がいるんだ。全てを犠牲にして追いかけるほどの夢じゃない』
勇喜はプロ野球選手への道を捨て、俺はプロのピアニストになった。
アルバムもリリースする事ができて……嫌だったけど、顔を売る為にメディアの取材もできるだけ受けた。
『王子』なんて背筋が寒くなるあだ名を付けられて、リサイタルもそこそこ人を集められるようになった今年の初め頃から……
そこはかとなく、右手の指に違和感を感じるようになった。
感情の赴くままに動いていた指が、意識を集中させないと思い通りに動いてくれない。
病院に行っても何も異常は無いと言われた。
それでもひとたび滲み出た違和感は日を追うごとにどんどん強くなっていき、やがて確実に右手を蝕んでいった。