ベビーフェイスと甘い嘘
その表情を見て、この記憶が決して思い違いでは無かったのだという事を、確信する。
「……来たこと、あったね」
……そう。
7月の鞠枝さんの送別会があったあの日。
酔った直喜を『ウサミ』まで送ろうとして、私は確かに、この道を通った。
「ねぇ、茜さん。この道ってさ、先は行き止まりで『ウサミ』には繋がっていないって知ってた?」
「……やっぱり知らなかったんだ。店のほうに抜けようと思ったら、中から行くしかないんだ」
「あの家は離れで、今は俺だけしか住んでないんだけどね。この道も家の敷地だから、近所の人ならここには入って来ないよ。みんな知ってるからね」
「教えてくれたらよかったのに……」
「……だって、もったいなくて。せっかく茜さんに会えたのに。もう少しだけって思ったら、言い出せなかった」