ベビーフェイスと甘い嘘
お互い無言で、目の前の道を歩いた。

最初にそろそろと軽く触れたはずの手は、歩くうちにいつの間にか繋ぎ直されてしまっていた。


絡まる指から少しずつ伝わる、私よりも少し低めの体温。


強引ではないけれど抗えない強さで引かれていき、戸惑う気持ちばかりが膨らんでいく。


ピシッと高さの揃った生垣、細かな砂利が敷き詰められた小道……


初めて通る道のはずなのに、どこか見覚えのある景色を歩いて行く。


……まるでデジャブのようだけど違う。


私は、この道を通った事がある。


心の隅に何か引っ掛かりのあるような、モヤモヤとした気持ちのまま道の先を見て、アイボリー色の建物を目にした瞬間に……


全てを思い出して、思わず、「……あっ」と小さく声を上げてしまっていた。


「……気がついた?」


気まずそうな声が聞こえて顔を上げると、直喜は少しだけ頬を赤らめた顔で、私を見つめていた。

< 550 / 620 >

この作品をシェア

pagetop