ベビーフェイスと甘い嘘
「逢沢と会ってたんでしょ?二人きりなんて珍しい組み合わせだね」


九嶋くんが驚くのも無理はない。


暫くまともに話すどころか、顔を合わせる事すらできなかったから、私が初花ちゃんの事を心配していたのは分かっていただろうけど、この前初花ちゃんを強引に『Felitita』に引っ張って行った事は知らないはずだ。


その時に、私が初花ちゃんとの心の距離を縮めようとした事も。


私が九嶋くんに告白されてから、きちんと向き合って話すのは今日が初めてだ。



だけど、九嶋くんも初花ちゃんが明日何をしようとしているのかは知ってるはずだ。


「私、初花ちゃんと友達になったの。私達、前の店から一緒の同士だもの。……九嶋くんもだからね」


ふふっと笑いながら言うと、


「……まぁ、店長と逢沢に何があったのかは知らないけど、二人とも素直になったら絶対うまくいくはずだから。逢沢には頑張って欲しいよ」


と返事が返って来た。やっぱり初花ちゃんから聞いていたみたい。


今朝スタッフルームで話していたのは、きっとその事だったんだ。


そう分かった瞬間に、何だか胸の底でモヤモヤとしていた気持ちがフッと軽くなったような気がしたけど……



その気持ちは、深く考えたらいけない気がして、今朝二人が何を話していたのかを聞く事はしなかった。

< 589 / 620 >

この作品をシェア

pagetop