ベビーフェイスと甘い嘘

「ーー私は、九嶋くんの気持ちには応えられない」



『気持ちに応えられなくて"ごめんなさい"』


『こんな私を、好きになってくれて"ありがとう"』



九嶋くんに救われた事も沢山あった。



……だけど『ごめんなさい』も『ありがとう』も、これから先あなたと寄り添えない私が伝えてはいけない言葉だと思うから、


心の中だけでそっと思って、言えなかった言葉は胸の奥に飲み込んだ。



そして『気持ちには応えられない』と、それだけを伝えた。



「『応えられない』……だけか」



はぁ、とため息をついて九嶋くんは困ったような表情で私と視線を合わせた。


「まぁ……予想はしてたけど……でも予想外だったかな」


「ねーさんは、いつも俺の予想を裏切ってくるね。身内以外には無関心な人だと思ってたのに、一旦繋がりができたらめちゃくちゃ懐に入ってくるし。気を許してくれてんのかと思って近づいたら……あっという間に離れて行くし」


「……泣き虫かと思ったら、本当に辛い時でも意地でも泣かないし」


「俺はさ、ねーさんの涙に惹かれたけど……あれは俺に見せた涙じゃ無かったんだよね」


困ったままの表情で笑う九嶋くんの、私への呼び方がいつの間にか『茜さん』から『ねーさん』に戻っていた。


それを聞いて九嶋くんも、私と同じく気持ちに区切りを付けてくれたのだと分かった。




「……パン……投げつけてやればよかった」



「……えっ?何?」


そんな事を考えていたから、九嶋くんがボソッと呟いた言葉を聞き逃してしまった。
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