切ないの欠片~無意識のため息~
あなたが欲しいのよ。ちゃんとした形で。どうしましょう、ねえ、好きになってしまってるのだわ・・・。
そんな言葉が出てきそうだから、私はぐっと口を噤んでいる。
言葉を出せば、もう彼には会えないだろう。
本当はその方がいいのかもしれない。だけれども、まだ言えないのだ。今は、まだ。
時計の針は5時15分を指している。彼が出て行ってから、しんと静まり返った私の部屋は、ゆっくりと明るくなってきている。
私は少しだけ泣いてから、もう一度毛布の下へと潜り込んだ。
次は素敵な目覚めでありますようにと呟いて。
・田辺ミミの場合 終わり。