切ないの欠片~無意識のため息~
「サオリはさ、本当に黙ってるよね、ずっと」
「もうちょっと明るい声で話しかけてみたら?笑ったら可愛いのに」
褒めてくれているのだとしても、笑えば可愛いということは、あまり笑わない私はブサイクってことだよね。そう心の中でぶつぶつ言いながら、私は曖昧に首をかしげた。
数少ない友人達の褒め言葉にもそんな風に意地悪くとっては茶化してしまう。
顔もそうだけど、性格だって、可愛くない。それが自分でもよーく判ってる。
ああ・・・こんなんで、彼に近づけるわけはないではないか。
「心配してくれてありがと。でも大丈夫よ。一人でも割合平気だし」
そう言って、鞄から定期を出した。
友人達の話題はすでに他へとうつっている。きゃあきゃあと明るい声がビル街にこだましては消えていく。風が涼しくなって冬も近いと感じさせる空を、私は一人で見上げた。
友達、と言っていいかも判らない間柄の彼女達。
席が近いのでお互いに会話をすることで一般的なクラスメイトからは抜け出た関係ではあるけれど、間違っても大学生になってからのルームシェアなど考えられないくらいの、ほどほどの距離の友達。大して好きでも嫌いでもない。だってそんな激しい感情を抱くような事件が、彼女たちと私の間にはなかったから。
浮かない程度に喋る「友達」。帰り道用の「友達」。何か学校行事の時に一緒にいる「友達」。便利で簡単なそんな間柄を、私も他の人のように困らない程度にもっていた。