抱き寄せて、キスをして《短編》
中でも新太は背が高くて一際眼を引いた。

かっこいいと思った。

研修中、誰よりも覚えが早くて業務を卒なくこなし、頭の良さが直ぐに分かった。

この人、いいかも。

顔立ちも涼やかなイケメンだし、私はすぐに新太を気に入った。

だから新太の事は何でも知りたかった。

「俺の趣味?」

お酒のせいか新太は瞳にほんのりと色気を漂わせながら、私を斜めから見下ろした。

「模写。画が好きなんだ。なかでも『岩窟の聖母』はかなり好きかな。『受胎告知』も好きなんだ」

え?何て言ったの?聞こえなかった。

すぐ横を通った特急列車のせいで新太の言葉の半分がかき消されたが、私は頷いて話を合わせようとした。
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