秋麗パラドックス
小春のものと比べて少し重かったな、と思いながら私はパパッと開けていく。
そして中から出てきた一枚の紙。
―――と共に、一枚の小さな紙とティッシュに包まれた固いものが入っていて。
その固いものの正体は、指輪だった。
それを横から見ていた小春が、『ねえ、それって…』と言う。
「そう。…もらったやつだよ」
これは、“彼”から貰ったものだった。
別れる一年前に貰ったものだ。
『一年記念』と言って、“彼”がくれたものだった。
指輪と言っても、これはそこら辺に売ってる安物じゃない。
ちゃんと雑誌に出てるようなブランド物のもので。
高校生が買うにしては少し値が張るもの。
貰った当初は嬉しくて、体育の日以外は毎日着けて行っていた。
みんなに『羨ましい』と言われて。
私も幸せだった。
けれど、私はこの中に今の今まで入れていた。
見たくなかったから。
―――手元に置いておきたくなかったから。