秋麗パラドックス





私はこの指輪を見て、もうこの手紙を見ようとは思わなかった。

きっと内容は、そう言ったものだ。
分かり切っていたから。

カバンの中にその手紙を乱雑に仕舞い、小春に『どうだった?』と聞く。



「…ちゃんと書いてたよ。『結婚しろよ』って」

「ほら、心配しなくても真面目に書いてるじゃん」



私は笑っているのに、小春が泣きそうな、辛そうな顔をしていた。
けれど、私は気付かないフリをした。


周りも騒いでいて。
『俺、いいこと書いてるぜ!』とか、『私馬鹿すぎる!恥ずかしい!』とか。
それぞれ各々の反応をしていた。

そんな中、私は小春に告げる。




「じゃあ、私帰るから」




その私の言葉に、小春は驚く。
驚かなくてもいいでしょと思いながらも、『何で?!』と言う小春。



「元々このタイムカプセルだけ来ようと思ってたの」

「嘘でしょ!?」



あからさまにどうしよう、と言うような表情をする小春。


ねえ、小春。
私、知ってるんだよ。

小春が二年前、大学卒業してから結構大きな企業に入社して、一年と少しでリストラに遭ったとき。
“彼”が小春を助けたこと。

今小春は、“彼”が働く病院で事務をしていること。




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