秋麗パラドックス





「こんな冗談、言わないよ」
「嘘じゃないな?」
「こんな面白くもない嘘、言ったって、徹だって笑ってくれないでしょう?」



そしてまた更に、徹は私を抱きしめた。
『夢みたいだ』と珍しく女々しいことを徹が言う。
けれど、『私も』と二人で微笑み合う。

そんな何気ない言葉でさえも、私たちにとっては特別で。
非日常的な幸せのように思えた。

卑屈になっていた、先程までの自分に、サヨナラを告げた。

そして、今。





「奈瑠、愛してる」

「私もよ、徹」




この上ない幸せを噛みしめて、生きていく。
その始まりを告げるかのようなキスをして、私たちはしばらくの間見つめ合った。







*END*
< 46 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop