幽霊の影
暗雲
あれから、眠れない夜が続いている。



相変わらず夫の帰宅は遅く、そしてやはり、これまでと変わった様子は全く見られない。


朝は、食事も身支度もさっさと済ませて出勤してしまうが、それは以前からの事だったし

夜も、私が先に休んだからと言って、別に怒るような人ではなかった。



夫婦仲が冷えきったり険悪になったりしたわけではないが、あの日の口論の事は、はっきりとわかる形で謝罪や和解をしておらず、何となく気まずい私は夫の帰宅前に寝室へ引き上げるようになった。



しかしベッドに入ってもなかなか寝付けず、眠れば眠ったで、見たくもないような夢ばかり見る。


夫の後ろ姿

隣を歩く女の長い髪が、ネオンに照らされたホテル街で

現実の光景よりも一層生々しい――
< 28 / 58 >

この作品をシェア

pagetop