負けません!

どうしよう、どうしよう、どうしよう

園児がいなくなった園内をパタパタと走る

あ!いた!

「園長先生!」

息を切らしながらつい大きな声を出してしまった

「園長って呼ぶなって」

「そ、そんな呑気なこと、言ってる場合じゃないの!」

キョトンとした顔から経営者の顔になった

「何かあったのか?」

あたしはこくんと頷いた

「とんぼ組の向井かなたくんのお母様が行方不明になりお迎えが来ません
お父様の電話番号も分からなく連絡が取れません」

「その子は?」

園長は驚いた顔を一瞬したがすぐにキリッとした顔に戻った

「今みちこ先生と一緒に教室にいます

すみません あたし 昨日も今日も会ったのにお母様の変化に気づけませんでした
もっと早く気づけてたらきっとこんな結果に…」

「渡 南先生
今はそんな事考えている場合ではありません
それはまた後で考えることです」

涙が出そうだったところをあたしはぐっとこらえた

そうだ、今は泣いている場合ではない

「南先生はそのままその子の傍に 私は母親の行方を探してみます」

「わかりました 失礼します」

園長は至って冷静だった





結局この日には父親も母親も見つからなかった

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