ゆりかご
少し早足で歩いてる向こう側から、カサカサという音と、人影が見えてきた。

近くにコンビニがあるから、その帰りの人かな…。

夜は暗く静かなせいで、物音に敏感になってしまう。


「…あ!」

こちらに向かって来るシルエット……手足がスラリと伸びたそれは、間違いない、昔から良く知ってるーーー。

「雪乃!」

「繭子…?誰かと思った。制服じゃん、今帰り?」

Tシャツにショーパンとラフな格好の雪乃は、コンビニの袋とトートバッグを片手に持っていた。

「うん。翔矢の家にいたから。雪乃は?どこ行くの?」

雪乃の行く方向は、家に向かう道とは違っていた。

「あ、翔くんち。」

えーーー…。

「練習メニューの打ち合わせ。ほら、今日部活休んでるから。」

「…そんなの、学校ですれば……よくない?」

「大会が近いの。補欠だけど選ばれてるから。」

……。

「繭子、翔くんから聞いてない?」


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