ゆりかご
「コータロー…あたし、行くね。土曜日頑張っ……て…。」

「清田さん。」

立ち上がろうと右の手のひらに少し力を入れ、地面を押すーーーその手の上にもう1つの手が重なり、あたしの動きを止めた。

コータローの左手が、あたしの動きを止めたんだ。

「コータロー…何して……。」

「もう少し、一緒にいて。」


シャラ……

コータローの左手に自由を奪われたまま、近づいてくるコータローの顔を途中まで見て、あたしは目を閉じたーーー。


「……。」

唇の感触がなくなってから目を開けたあたしは、すぐ近くでコータローと交わる視線を感じて、キスされたのだと実感した。

「…ごめん、コータロー。あたし……。」

「え⁈ちょっと待って、謝るのはオレだから。」

「いや、あたしだと思う。」


< 176 / 272 >

この作品をシェア

pagetop