私を本気にさせないで
このままじゃダメだよ。

そうだ、このままじゃダメだ。
これじゃ全然昔と変われていないじゃない。

肝心なことを言えずに逃げてきただけだ。

「伝えなくちゃ」

例え大森君は私に気持ちがなくなってしまったとしても、気持ちだけは伝えなくちゃだめだ。
いい加減逃げてばかりのままの自分ではダメだ。

そう自分を奮い立たせ、気持ちを伝えるべく会社に戻ろうとした時。

「白田先輩っ!」

はっきりと聞こえた叫ぶような彼の声。

振り返り見ると、人混みを掻き分け私に向かって駆けよってくる彼の姿を視界が捉えた瞬間、驚きのあまりその場に立ち尽くしてしまった。

う、そ……大森君?

私、幻をみているわけじゃないよね?
今、目の前まで駆け寄ってきてくれたのは、大森君で間違いないんだよね?
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