私を本気にさせないで
信じられなかった。
だって私、酷いことを言ってしまったのに。
彼の腕を振り払ってしまったのに、まさか追い掛けてきてくれるなんて、夢にも思わなかったから……。

苦しそうに肩で息をしながら目の前で立ち止まると、彼は切羽詰ったように私を捉えた。

「最初から本気でしたからっ……!」

「え……キャッ!?」

一瞬にして彼に腕を引かれ抱き寄せられてしまった。
するとすぐに襲ってくる彼のぬくもりと、香り。
そして速い胸の鼓動に、急速に身体は熱を帯びていく。

それでも彼は私の存在を確かめるように、何度も何度も苦しいくらい抱きしめる力を強めてくる。

「本気じゃないわけないじゃないですか……すっげ好きで堪らないのにっ」
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