私を本気にさせないで
「大森……君?」

やっと出た絞り出したような自分の声に酷く驚いたのも束の間、大森君はゆっくりと私との距離を縮めてきた。

次第に近づく距離に、瞬きすることも忘れ凝視してしまう。

やだ……どうしよう。
このままじゃまずいって分かっているのに、身体が言うことを聞いてくれない。

それどころか視線さえも逸らせない。

胸の高鳴りはピークを迎える中、唇と唇が触れてしまいそうな至近距離で、彼は吐息交じりに囁いた。

「白田先輩が悪い」

「……っん!」

言葉が放たれた瞬間、啄むようなキスが落とされる。

一瞬のキスに、目を見開いてしまえば、少しだけ大森君の表情が和らいだ。

「あーあ、せっかく我慢していたのに。……俺のせいじゃないですからね」
< 51 / 125 >

この作品をシェア

pagetop