私を本気にさせないで
あーあ、また無邪気な笑顔を見せて……。

きっとこういった笑顔にみんな完全にやられちゃっているんだろうな。

ドキッとさせられたのも一瞬で、平常心に戻っていく。

私は周りとは違う。
どんなに彼が魅力的な男だろうと、簡単にときめいたりしない。
絶対にもう本気で人を好きになんて、なりたくないから……。

それからエレベーターホールへと向かい、呼び出すとすぐに到着したエレベーターに乗り込んだ。

二十階建てのビルの十五階にある広報部。
エレベーターの中には誰も乗っておらず、それを確認するとなぜか大森君の表情は一変し、ジリジリと私をエレベーター奥に追い込むように、詰め寄ってきた。

「え……?」

表情を変えず無言のまま詰め寄られるたびに、追い込まれていく。
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