無口なセンパイに恋した仔羊
…それから週末まで、なんの進展もないまま仕事だけをこなしていた。

今夜も残業して、1人家路につく。

…たく。道端でラブシーンはやめて欲しい。

あろう事か、マンションの入り口で、男女がキスしている。

離れた2人の顔が、目に飛び込んできた。

「…お前ら」

その男女は、綾人と…新垣だった。

呆然とするオレを見た新垣の目には、涙が浮かんでいた。

…何がどうなってるんだ?

複雑な気持ちが交錯する。

でも、何が一番勝っていたか。

…それは、…嫉妬。

新垣は、その場を逃げるようにマンションの中に入ってしまった。

…その場に取り残されたオレと綾人。

「…琉偉」
「…」

「…どうしても、美鈴は、琉偉には譲れねぇ」

そう、捨て台詞を吐き、綾人はその場を去った。
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