オトナな部長に独占されて!?
唇を噛み締めて怒りに耐える私の隣で、ソファーが軋んだ。
葉月部長が立ち上がり、優雅な足取りで再び店内を歩き始めた。
「鶴亀さん、古い物には趣がありますよね。
天井の梁、柱、床板は、磨けば艶やかに美しく光ることでしょう。
アンティークの照明も窓枠も、備品の一つ一つが素敵です。
築60年の写真館。私はこのままがいいと思いますよ。
この店に来て最初に、飾られている写真の多さに驚きました。
かなり古い写真も飾られているのですね。
これらは全て鶴亀さんの作品ですか?」
「私と、今は亡き父が撮った物です……。
写真を写しに来てくれたお客さん達の笑顔が、この店の歴史なんです。
そうなんです……。
部長さんの言う通りだ……。
私はこの写真館を変えたくないんだ。
父と私の二代でやってきた鶴亀写真館は、私の歴史で、親父の歴史で、お客さん達の歴史なんですよ。
変えたくない。
今風になんか、変えたくない。
だが……」
「息子さんのことですか?」
「ははっ、部長さんは何でもお見通しなんですね。
息子の寿彦はフリーカメラマンをしていて、あっちフラフラ、こっちフラフラの情けない奴ですわ。
それでもいつか帰ってきて、この店を継いでくれないかと期待してたんですが……無理でしょうね。
最近帰ってきたのは、もう3年も前のことですわ。
高村さんがリフォームしないかと言ってきた時に、今風の店にしたら寿彦も継ぐ気になるんじゃないかと思ってしまったけど……駄目です。
変わってしまったら、鶴亀写真館じゃなくなってしまう。死んだ親父に顔向けできん。
部長さん、ありがとうございます。目が覚めました。この店は私の代で、終わりにします。
高村さん、ごめんな」