オトナな部長に独占されて!?
部長デスクに荷物を置いてから、新部長は魅力的なバリトンボイスで営業部総員102名の前で話し始めた。
「皆さんにご挨拶をさせて下さい。
ああ、集まらなくていいです。どうかそのままで。
電話中の方は、そちらを優先して下さい。
急ぎの仕事がある方も、そちらを続けて」
狸オヤジなら、仕事を中断して集合しろと言いそうだが、新部長は違った。
業務優先、耳だけ拝借と、私達に気遣いを見せてから、挨拶を始めた。
「葉月紳一郎です。この度、ロンドン支社から本社営業部への移動となりました。
ロンドン支社は人手が足りなく、私も顧客回りに出ていましたので、営業に関する知識はあると自負しております。どうかご安心下さい。
ですが、本社勤務は初めてのこと。ここでの従来のやり方と私のやり方には、違いがあることと思います。
おかしいと思ったら、疑問、不満は溜めずにすぐに言葉にしてもらいたい。
皆さんと話し合う中で、最適な選択をしていきたいと考えています」
ふーん……。
挨拶の言葉が本心であるなら、狸オヤジとは違うみたい。
狸オヤジなら、俺の言うことに逆らうな。疑問不満は受け付けない。黙って言うことを聞け。常々、そんな指揮をとってきて、言いたいことを言わせてもらえず腹が立つことも多かった。
葉月部長は違うのか……。
いや、でも、まだわからない。
本音と建前ってやつかもしれないからね。
男は信用ならないから……そんなことを考えていた時、睨みを利かせる私と、挨拶途中の葉月部長の視線が合ってしまった。