オトナな部長に独占されて!?
暦の上で春とは言え、夜の気温は10度を下回る。
ここに立ちっ放しで30分以上。
寒さに体が震えてきた時に、「お嬢ちゃん、風邪引くぞ」と後ろに声がした。
「大黒さん……」
「見に来てたのか。
気になって仕方ないって面してんな」
「は、はい」
「繁盛してるから、大丈夫だ。
他の新店も見てきたけどよ、どこも問題なさそうだ」
「そうですか! 良かった〜」
心から安堵して、ホッと息を吐き出した。
やっぱり前任の高橋課長のようにはいかず、大黒さんに怒鳴られたこともあった。
うちの下請けの工務店の社長さんからは、『時間足りねんだよ!』とお叱りも受けたが、頭を下げまくってなんとか期日に間に合わせてもらえた。
私の力不足のせいで、あちこちに迷惑をかけてしまった。
私自身も精神的肉体的にきつかった。
大黒さんが言ってくれた『問題ない』との言葉は、今の私にとっては最大の褒め言葉。
『素晴らしい』とか『君に頼んで良かった』とか、そんな言葉をもらえるほどの実力は、今の私にはないのだと分かっている。