恋愛格差

今度はゆかりさんがポカンとしていた。

ですよね。

カウンターに座ってたママが笑いだした。

「ははは!面白いわねえ。
彼氏のために乗り込んできたと思ったら、今度は相手を持ち上げるの?
……変な子ねぇ。あ、どうぞ。続けて、ゆかりちゃん。」

えっと……と話を戻す。

「とにかく、そういうことなの。
私はその後、すぐるが居なくなってそりゃもう誰彼構わず遊んだわ。
で、出来たのが息子。
その時付き合ってた彼に話したんだけど『俺の子じゃないかもしれないだろ』って言われて別れた。
一人ぼっちは嫌だったし、子供は欲しかったから産んだの。親は反対しなかったけど、短大も辞めないといけなくて。ほぼ一人で育てるとなると……
で、手っ取り早く稼ぎたくてこの世界に……ってすいません、ママ……」

「いいのよ。そんなもんよ、誰だって。」ヒラヒラと諦めたように手を振る。

「すぐるには悪いことをしたわ。すごく良いお酒をいつも入れてくれて。私があんまり良い暮らしをしてないって知ってから、よく来てくれた。ほんとに助かってたの。
でも、ビデオの話なんかしてないわよ。
だから元カノへの単なる同情なのかと思ってたの。
でも多分違ったのね。
あのビデオの存在が彼をがんじがらめにしたのよね。

私も
すぐるには溺愛彼女がいるって上司の人から聞いて、
しかも自分はエリートコースに乗っかって……だからまた憎さが少し戻ってきたのよ……。

あなたにも態度悪くてごめんなさい。
負け犬の遠吠えだと思って……」

「ゆかりちゃん」
ドスの効いた声が響く。

「それって謝ってるようには思えないわ。
吉岡くんは仕事をやめてまた遠くに行こうとしてるのよ。
あなたはまた彼の人生を狂わせて、そんな謝罪で終わらせるつもり?

それがあなたの本心なら私はあなたとは縁を切るわ。
今すぐ出てってちょうだい。」

ゆかりさんは怒り心頭のママを見てしょんぼり肩を落とし、ゆっくり私に振り返った。

「彼に伝えてほしいの……」
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