恋愛格差

テーブルセット、オッケー。
あとは昨日の残り物を暖めるだけ。
ご飯は作らない。
私が食べるのに困らないように優が全部してくれているから冷蔵庫はパンパンだ。

楽チン生活で私がする事と言えばただ、優にお世話されて甘やかされることだけ。

だから、優の居ない今日の日中は暇だった。
そして考えてしまった。
これまでのこと、これからのこと。
そして、優のこの1週間の溺愛ぶりを思い出して、改めて赤面して一人で悶えていた。



ピンポーン

こんなにウキウキドキドキした気持ちで彼を迎えるなんていつ振りだろう。

私が玄関についたのと、優が玄関扉を開けたのは同時だった。

「ただいま」「おかえり」

回りに花でも散らされているような笑顔で私たちは微笑み合った。そして私の唇にチュッと軽いキスを落とす。
新婚も真っ青なラブラブぶり……だと思う。


しかし、そろそろ現実に戻らないといけないのは事実。
今日から出社した優と同様、私も休みすぎだしそろそろ仕事にいかないといけない。
それは落ち着いてから頭の片隅にずっと疼いていたこと。

社長や三池さんは「好きなだけ休んでいいから」と言ってくれたけど、社会人としてそんな訳にはいかない。
明後日には出勤することを電話で報告したのだ。


簡単な食事とその後片付けを終えて、優はシャワーに向かった。

私はリビングでホットミルクを飲む。
いつもはワインとかチューハイなんだけど。
今から話さないいけないことを考えると、アルコールを飲む訳にはいかない。

何から話すべきか。

頭を整理するにはこの1週間脳を甘やかしすぎた。

「どうしたの?」

頭を抱えていた私は飛び上がった。

「うわっっ!……ビックリした。あがったの?早かったね……」
「……?別にコッソリ上がってきたつもりはないけど?」

そう言うとベットボトルを持って、優雅に私の横に座った。

左手は私の腰に回す。そして私の顔を横から覗き込む。
その表情は柔らかで愛情と色気が溢れている。
どっかのファンタジーに出てくる王子様かそこら。

「ん?透子?」

優はしょっちゅう私の名前を呼ぶ。
呼ばなくても良い場面で呼ぶ。
そして私が負った額の小さな傷跡にそっと触れる。
その度に私はここに居てもいいんだと言われているようで嬉しい。

甘酸っぱくて、暖か。

これが1週間前からの私たちの通常になってしまった。

これ以上この状況にいるのは危険だ。
社会人として、人間としてダメになってしまう気がする。
だから私は期限を明日いっぱいにしたのだ。
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