恋愛格差
元彼がしつこい
その日は会社に戻る男性陣を待つことなく
仕事を定時で終え、
土日に気分を削がれて行けなかった買い物へ。

大人の女らしいワンピースと
できる女を彷彿とさせるスーツ、
そしてハイヒールを買って家に着いた。

満足満足。

服も彼も一新して再出発。

新しい服と靴を眺めながら笑顔になる。

テレビをつけて缶ビールを開ける。

でも……
ほんの少しだけどスペースの空いたテレビ横が目に入る。
それを見てちょっとだけ寂しく思った。

そういえば今日には優のもとに荷物は届くのかな。


優の家に置いてきたワンピース。
決してユルフワ系ではない。
シンプルだけど私の体にピッタリ合っていて、
素材もよくてスレンダーに見えた。
私も優もお気に入り。
あれを着ると「めちゃカワイイ!」って必ず誉めてくれたっけ。

あのワンピースだけは取り戻したかったなぁ…

なんて思っているとピンポーンとチャイムが鳴る。

まさか……

ドアの覗き穴からそっと見ると、
やはり優だった。

電気が点いてる時点で居留守は不可能。
どうしたものかと悩んでいたら

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン♪

やーめーてー

ムンクの叫びみたいにほっぺを掌で押さえつけ
ドアの向こうの優に睨みをきかせる。

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン♪

どうしようどうしよう

焦っていると隣のおはさんが
「どうしました~」って言うのが聞こえた。


「すいません。お騒がせして……
彼女が体調悪いみたいなのに連絡とれなくて、心配で来てみたんですけど、電気は点いてるから居るとは思うんですけど出てこなくて……」

なんだと!

男前に弱い隣のおばさんは時々来る優の事を気に入っていた。
迷惑この上ない行為なのに、優と話せたのが嬉しかったのか「あらぁ」と相槌を打ってるようだ。

「すいませんが大家さんの連絡先知りませんか!倒れてるかも!」

こらぁ!お前どこの役者だよ!

「ちょっと待っててね~」と朗らかな声が聞こえたところで急いでドアを開けた。

「あ!透子!!無事だった?よかった~」
とギュッと抱き締められた。

「田中さん、お世話をお掛けしました。」
と天使の微笑みでヤツはペコリと軽く頭を下げると
「いいのよ~よかったわね~」と頬を軽く染めて入っていってしまった。

瞬時に田中さんと言う名前をわざわざ出せるところが
いかにも出来る営業マンだ。

そして残された二人。

奇しくも抱きあっている。
いや、抱きつかれている。

溜め息をついて「まぁ取り合えずどうぞ」と中へ促す。
これ以上ここでやいのやいのやるわけにはいかない。

パアッと満面の笑みになって「お邪魔します!」
と靴を脱いだ。

アレだな……子犬が餌を見せられて尻尾振ってるのとそっくりだな。

ほんと、憎めないやつだ……忌々しい……

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