恋愛格差

コトンと私の前に置かれたボトルには、黄金色のトロリとした液体が揺れている。

こんな高価なブランデー飲むんだ……

国産だけれど私も知ってるぐらい有名なそれは、こういう所では何万もするものだ。

そして優はブランデーは付き合い以外では飲まない。
スコッチウイスキーが好きだから。

と言うことは、
これは接待のためか、この店の売り上げに貢献するためだろうか。

一時期店に通いつめていた優の行動は、後者を正解だと物語っている。

「あ、あの!水割りじゃなくて……吉岡さんと同じ飲み方にしてください!」

グラスに氷を入れていた彼女の手がピタリと止まる。

「こんないいお酒なんですから、美味しく飲みたいので……」

どんな理由であれ、こんな高価なお酒を水割りで飲むのは気が引ける。酔うわけにはいかないけど……

「彼はストレートよ。大丈夫なの?」
横からママが心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「はい。」

「じゃあ……」と言って、ゆかりさんはブランデーグラスではなく、ロックグラスに注いだ。

それを静かに前に置かれる。

マ、マジですか……?

大きめのロックグラスには氷は入っておらず、それでいてボトルの5分の1ぐらいは注がれている。

これってゆかりさんの意地悪なのかしら……?


「言っとくけど、それが彼のスタイルだから。苛めじゃないわよ。」
ジットリ睨まれた。

心の声が漏れてたか……

「い、いただきます。」

溢れそうなグラスをゆっくり口に近付けて、それこそチビッと飲んでみた。

うわっっ!これは濃いわ~~~

香りがフワッと口から鼻へ抜けて、とってもまろやかなブランデーだ。
しかし、ビールとチューハイとワインぐらいしか飲まない私には非常に高度な酒だ。

これ、全部飲めるだろうか……

と、心配していたら「これ、吉岡くんは5分ぐらいで飲んじゃうから。」と笑いながらママが言う。

5分で?
ほぼ一気飲みじゃないか?


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