控え目に甘く、想いは直線的
来た道を戻っていく。

通ってきた道を思い出してみるけど、確かにコンビニがあったくらいで何もなかった。でも、このまま真っ直ぐ家に帰ればお昼頃には到着できる。

だから、どこかで食べなくても良いのではないかと思った。

真っ直ぐ帰ることを提案しようとしたけど、BGMに合わせてハンドルを持つ左手の人差し指が軽快に上下するほど機嫌が良くなっている部長には自分の意向を伝えられなかった。

言ったところでまた不機嫌になられても困る。だけど、何にご機嫌なのだろう。

元々バーベキューにはあまり乗り気ではなさそうだったから、帰れることが単純に嬉しいのかもしれない。


「そうだ。俺、観たい映画があるんだ」


「はあ……そうなんですか?」


「食べてから見るか?」


「時間をお調べしましょうか? なんていうタイトルですか?」


運転している部長にかわって、ネットで調べようとカバンからスマホを取り出した。
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