控え目に甘く、想いは直線的
「野々宮。分かってるかと思うけど、お前も一緒に見るんだからな」


「はい? え、ええっ! 私もですか?」


他の映画館の時間を調べようとしていた手を止めて、部長を見た。部長一人で行くものだと思っていたし、私も一人で見るつもりだった。

運転中の部長は横目で私を見る。


「別に体調は悪くないし、時間はあるだろ? それに野々宮も観たいんだろ? だったら、一緒に見ればいい。元々そのつもりで誘ったんだけど」


どうやら私は映画に誘われていたらしい。誘われているなんて思わなかった。男の人と一緒に映画を見たことはない。

そういえば、姉は映画デートだと朝、浮かれていた。私も映画を見るとなると、同じようにデートになる?


「なんかデートみたい……」


「そのつもりだけど」


「あ、そうなんですか……」


みんなでバーベキューの予定が急遽映画デートになるなんて思いも寄らなかったことである。
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