控え目に甘く、想いは直線的
さっきの最終面接よりも緊張してしまう。

でも、いつまでも答えを待たせてはおけない。


「実は、コロアールマーケティングの最終面接に行った帰りなんです」


何とか答えることが出来たけど、出てきた声は自分でも驚くほど震えていた。


「えっ? そうだったの? じゃあ、俺の兄にも会ったかな? 人事部長が兄なんだけど」


「はい、お兄さんが面接をしてくれました」


「そうかー。二人とも受かるといいね。あ、名前聞いてもいい?」


私が名乗ったあとに柊花も名乗る。


「夕美ちゃんに柊花ちゃんだね。兄に二人を薦めてあげたいけど、俺の言うことには聞き耳をもたないんだよね。ごめんね、お役に立てなくて」


「いえ、とんでもないです! そのお気持ちだけで充分です」


同じ会社に入って一緒に働くことを目標に今日まで頑張ってきた。

だけど、ここで会えたことだけで本当に充分だった。涼さんが私のことを覚えてくれたことがとにかく嬉しい。


「おっと、ヤバイ。三時に待ち合わしていたんだ。じゃ、二人とも受かることを祈ってるからね」
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