正義の人
出会い
 梅雨の間の貴重な快晴日のせいか、いつもは閑散としている店のロビーが来店客で混雑している。
 掲示板に目をやると、10人待ちで待ち時間も15分を表示していた。
「やれやれ、気が短いお客が怒り出さなきゃいいが‥。」
そう思った矢先だった。
「ふざけるな。」
男の怒声が、さして広くない1階のフロア中に響き渡った。
「俺が本人だって言ってるだろ。」
「家に帰ってる時間なんて、ありゃしねえんだよ。」
「しかし、お客様‥」
 対応している私の部下である女性の震える声のトーンから、彼女では手に負えない事は明らかだった。
「仕方がない‥俺の出番か‥。」
私は椅子から腰を上げた。
 関東中央銀行町田支店の1階、店頭カウンターから三列目の中央が私の席だ。営業事務課長という肩書のいわゆる中間管理職である。こういった顧客トラブルに対応し
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