バレンタイン狂詩曲(ラプソディー) 〜キスより甘くささやいて 番外編〜
はじめに
1月の終わり。
風間 颯太(かざま 颯太)29歳。
鎌倉の七里ガ浜駅から住宅街を抜けた奥にあるgâteauっていうケーキ屋でパティシエをしている。
今年の3月の終わりにgâteauは閉店し、俺はフランスの先輩の店で、仕事をしながら、パティシエのコンクールを目指すつもりだ。
一緒に住んでいる恋人の美咲は高校の同級生だった。昔は俺の一方的な片思いだったけど、去年の春、再会してから、毎日のように側にいて、好きだって、態度や、言葉でたくさん伝えて、やっと、友達から恋人に昇格したって感じかな。
美咲の柔らかい笑顔や、形にいい、長い手足や、柔らかい唇や、くっきりした二重の少し下がった形の黒目がちの瞳をやっと手に入れたところだけど、フランスには一緒に行かないって言い張っていて、きっと、もうすぐ離れて暮らさなければいけなくなるだろう。
離れても俺の心は美咲に釘づけなので、変わりはしないいんだけど、美咲を抱きしめられなくなるのはどうしようもなく辛い。
美咲が俺が心置きなく仕事が出来るようついてこないって言っているのは、確かだと思うけど…
美咲は俺に何度も愛してるってくちづけを返してくれるけど、絶対、俺の方がものすごく愛してるってそう思う。
美咲のいない生活なんて俺にはちっとも考えられないから、今、美咲が指にしているダイヤのエンゲージリングより、もっと強い力を持った指輪を美咲の指にさせてから、フランスに行きたいと思ってる。
絶対他の男には渡さない。
そう心に決めて、美咲を強く抱きしめて俺は深く眠りにつく。



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