バレンタイン狂詩曲(ラプソディー) 〜キスより甘くささやいて 番外編〜
その1 初めてのバレンタイン
美咲が俺の腕の中で、身動きする。俺が固く抱きしめると、
「おはよう、颯太」と言って、頬に唇をつけてくれる。俺は目を開かずに美咲の唇を探し当て、深くくちづけする。もちろん服は着せていないので、胸の膨らみが俺を直接刺激するけど、
「ん〜〜、シャワー浴びたい」ってくちづけの間に言って、身体をひねるので、今日は朝は控えておくことにする。まあ、夕べもかなり激しくしてしまったので、美咲を少し休ませてあげよう。
一緒にシャワーを浴びずに俺は着替えて、朝のランニングに出かけることにする。
1月終わりの朝はほの暗いし、海風はものすごく冷たい。ランニングパンツの下にタイツを重ね、風を通さないパーカーを羽織って、外に飛び出す。グレーの海に白波が立つのを横目でみて、走りながら、今日の予定や、ケーキの事を考えるのが、習慣になっている。
今日の仕事の事を考えながら、バレンタインのチョコレート、美咲はくれるかな。と考える。
初めてのバレンタインだから、チョット楽しみだ。
gâteauではバレンタインのチョコレートをもう、考えてあるけれど、(俺が作るのは日持ちがしないので、前日から作る。)
美咲はどうするつもりかな。
美咲の手作りチョコも食べてみたい気がする。

ランニングのお終いは毎回坂道ダッシュだ。
鎌倉の江ノ電の鎌倉高校前の駅のよこの広い坂道を登りきったところに、俺たちが住む家がある。
俺の両親はもう他界していて、中堅会社役員をしていた父の建てた白い四角い家を俺は相続している。オーシャンフロントのその家は、チョット、現実離れしている黒い螺旋階段や、真っ白い壁に黒い家具をスタイリッシュに並べてある感じは父と母の趣味だ。
出来れば、美咲と住む家は暖かい雰囲気の普通の家にしたい。まあ、大きな窓は、海が見渡せて、気に入っているけれど…

息を切らし家にたどり着いて、鍵を開けて入る。
リビングを通って、キッチンにいる美咲を捕まえる。毎朝の俺のゴールは美咲だ。ギュっと抱きしめると、
「外の匂いがする。」と美咲が笑顔を見せるので、俺は、いつものように美咲の額に唇をつけてからシャワーに向かった。
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