バレンタイン狂詩曲(ラプソディー) 〜キスより甘くささやいて 番外編〜
その4 ふたりの秘密
仕事を終えて、家に戻ったら、チョコレートの香りがしている。
美咲は今日も、俺のためにチョコレートを作っていたのかも。と思うと思わずにやける。
「おかえり。」と迎えに出てきた美咲をギュッと抱きしめて、くちづけする。
柔らかい美咲の唇をしばし楽しんでからゆっくり、唇をはなす。おかえりって言われるのは、一緒に暮らす幸せを感じる瞬間だ。
美咲はチョコレート作りの事には触れず、
「きょうの夕飯は、颯太の好きなビーフシチューですよ。」と俺の腕の中で、笑いかけてくる。
美咲が休みの日は少し時間がかかる料理を作ってくれるのが嬉しい。
だって、俺のいない間も、俺の事を考えながら、過ごしてくれてたってことだろ。
俺は美咲の額にキスをしてから、洗面所に手を洗いに向かった。
今日は、ワインを少し飲もうと思って、キッチンの後ろにあるパントリーに入り、赤ワイン用の保冷庫(ワイン用の保冷庫は赤と白別々だ。)を開けて、ハーフボトルの赤を選ぶ。
まあ、明日も仕事があるけど、少しならのんでもいいよな。ビーフシチューにはやっぱり、赤ワインだろ。とパントリーを出ようとすると、シャンパン用の保冷庫(美咲が好きなものがはいっていて、4℃くらいになっている。)に大きめの見慣れないタッパーがある。「?」と思って、中を覗くとチョコレートのトリュフの山だ。俺は、おいおい、美咲のヤツどれだけ練習してるんだよ。と少し思って、笑顔になる。まあ、見なかったことにしておこう。でも、これだけの量をひとりで食べたら胸焼けするだろ。と思って、対策を考えねば。と微笑んだ。
美咲が慌てて、パントリーを覗きに来る。きっと、練習したチョコレートが見つからないか気になったのだろう。
俺が赤ワインを手にしているのを見て、ホッとした顔だ。
「腹減った。」と言いながら、パントリーを後にすると、美咲は笑って、ワイングラスを取りに行った。
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