草花治療師の恋文
「やぁ、ライザ。体調はどうだい?」
「久しぶりだな、カール。まぁぼちぼちさ。」
ライザが本格的に体調を崩してからは、面会は執事の2人と治療師のクルガだけしか許可されていない。
しかし今日はライザが薬草師のカールを部屋に呼んだ。
「思ったよりは元気そうだね。」
カールはライザの様子を見て、ソファに腰掛けた。
確かにここ数日、本当に体調が良いのだ。
「そうだろ?だから君を呼んだんだ。」
「おや?なぜだい?」
カールは首を傾げる素振りを見せた。
「しらばくれてもダメだぞ、カール。」
「ふふっ。やっぱりわかったかい?さすがだね。」
ライザは、はーっとため息をついた。
「カール、マーガレットを薬草室に入れるな。」
「うーん。そう言われてもねー。我が姪は誰に似たのか頑固なんだよ。」
カールは困ったという顔をした。
ライザの薬は、基本は治療師のライザ本人が決め、薬草師のカールが作り、直接的治療は定期的にやってくるクルガが担当している。
しかし実は最近、マーガレットが薬を調合しているのだ。
それは誰も知らず、一緒に立ち会うカールのみが知っていた。
ライザは数日前、薬を飲んだ時に作り手がマーガレットであることに気付いていたのだ。
その時は正直嬉しく思ったが、それ以降の薬が毎回マーガレットによる調合であることが気になっていた。
薬は作り手の能力、感情によって効果は変動する。
「なんとか説得して、調合するのをやめさせろ。」
「えー?なんで?いいじゃない、体調いいんだから。」
カールはマーガレットを説得できるはずが無いと、首を横に振った。
「わかっているだろ、カール。調合はそれなりに体力を使うんだ。それを成長期のマーガレットが1日に何度もやるとどうなるか。」
「そりゃね。昔、そんな奴を見たことあるし。」
その言葉にライザは、ウッ…と言葉を詰まらせた。
「っ…とにかく、なんとかしろ!」
「だったら、マーガレットに会って直接いいなよ。ずっと会いたがってるし、心配した結果の行動だろ?」
ライザはまた言葉を詰まらせた。
カールはその姿をみて、小さくため息を吐いた。
「なんで会ってあげないの?」
その言葉に今度はライザがため息を吐いた。
「…だって、格好悪いだろ…。病気でベッドに伏せてる姿を見られるなんて…。」
「…はー…。君はなんとも…馬鹿なのかい?」
当主のライザに向かって馬鹿と言えるのは、恐らく幼馴染で義理の兄カールしかいない。
「とにかく今日、マーガレットに会いなよ。なんだったら、今呼んでこようか?」
「いや、いい!…心の準備が必要だ。」
そうかいと、カールは苦笑した。
「そういう人間らしいところをもっと見せてあげたらいいのに。」
「…無茶いうなよ。」
ベッドにコロンと寝転がりハーッと息を吐くライザと、それを見てまた笑うカール。
誰も見たことが無い2人の姿。
まるで幼少期に戻ったような気分で、2人とも懐かしむように時間を過ごした。