白衣の王子に迫られました。



その日の昼休み、私は遅目のランチを食べに食堂へ向かった。

さすがに午後の二時も過ぎれば、毎日席取り合戦が繰り広げられる食堂もガラガラだろう。

私はカウンターにトレイをのせると、「すみませーん」と声を掛ける。

すると「はいよ」と白衣を着たおばちゃんが元気のいい返事をしながら調理場の奥から顔を出す。

「唐揚げ定食お願いします」

「はい、唐揚げね。先生、今日は急ぎかい?」

おばちゃんがそう聞くのは、私たち医者が昼時であってもせわしなくしているのをいつも目にしているからだ。

例え食事の途中であっても、容赦なく電話で呼び出されるし、電話に出なければ、院内放送されてしまう。

だから私は極力、麺類を注文しないようにしているのだ。

呼び出された後でも、美味しく食べられるようにって。

「多分、大丈夫ですよ」

 おかげさまで今日は、病棟も落ち着いている。やるべき仕事を全て終わらせて食堂へ来たんだから、食べる時間位はそっとしておいてもらえるはずだ。

「なら、揚げたてを出してあげるよ。座って待っててくれる?」

「本当ですか? ありがとうございます!」

 ホクホクしながらお茶をついいで席へ向かうと、冷奴をちびちびと食べながら私を恨めしそうに睨んでいる香月君と目が合った。

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