白衣の王子に迫られました。
「もしかして……私のことじゃないよね?」
まさかと思って聞いてみる。こんなこと口にするのも恥ずかしいけど。
すると森下君はほう、と頷く。
「……分かっているなら話が早い。そんなオムライスなんてちゃっちゃと食べちゃってくださいね、先生」
森下君が食べるスピードを速める。上下する喉仏が、やけにセクシーにみえてしまう。
「待って、なんで今日なの?」
「じゃあ、いつならいいんですか? 俺、これ以上”マテ”は出来ません」
そりゃそうだろう。普通の恋人同士なら、とっくに済ませていることだろうし、森下君は見かけによらず肉食系。
ここまで待てたのは偉い方なんだろう。
「もしかして先生、本当は俺のこと……」
いきなりシュンとしてそんなことを言う森下君。私は慌てて首を左右に振った。
「違う、違う、そうじゃない! 私初めてで……」
言ってしまって慌てて口を噤んだ。
でも、時すでに遅し。
「え、先生って……処女?」
森下君の驚いたような顔をみて、言わなければよかったと後悔する。
「ごめん、重いよね。すごい年上で、処女なんて引くでしょ?」
こんなことなら無理やりにでも、香月君に私の処女をもらったもらえばよかった。
言葉が出ない様子の森下君になんて声を掛けたらいいのだろう。