白い隊服



「はぁーー......」


受け身の練習をやめ、そのままゴロンと仰向けになってため息をこぼした。



道場の天井を見つめていると、江戸の道場の天井と重なる。


師範元気かな...まだ腰痛いのかな...。

兄弟子たちは今どこで何をやっているんだろう...。





まだ幼い頃のあの夏。


稽古が終わった後、兄弟子たちと川に遊びに行って。

夜は親に内緒でこっそり皆と蛍を見に行った。



そのうち葉月が生まれて。


大好きな両親の跡を継ぐため医学の勉強も始めた。


初めて師範に勝ったとき、ご褒美に西瓜をみんなで食べた。


あの稽古後のおしゃべり。


喧嘩して泣いた日もあった。


どれも温かくて大切な時間。



...そんな中、両親が死んで。

葉月を養子に出すべく、京の都へ行くことが決まったのだ。


道場の方にも別れの挨拶に行った。


頑張れよ、と励ましてくれた師範や兄弟子たちとはもうそれきり。




つい最近のことなのにどうしてこんなに懐かしいのだろう。


思わず涙が滲み出た。


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