反逆者の微笑
反逆者の微笑
窓ガラスが割れた。
いや、割れたんじゃない。割った。
ぼくが、割ったんだ。
文字にするのが難しそうな、大きな音がでた。ちょっと驚いた。こんなに派手な音をたてるとは。
ぼくがひとりでびっくりしていると、何人かの女子がキャアッ、と短い悲鳴をあげた。まばたきをする間に聞こえなくなった。
だれも口を開かない。なんの音もしない。
教師でさえ、なにも言わない。
まるで、破壊音の余韻に浸っているようだ。そんなことを思った。本当は違うんだろうけど、ぼくには、そう、思えた。
みんな間抜けづらで、ぼくをじっと見つめていた。なにが起きたのかわからない、と顔に書いてあった。
少し笑えた。
中間テストの最終日、空はくもっていた。うすくて白い、やさしい雲じゃなくて、もっと重たい、のしかかるような、ねずみ色の雲。
おれたちの気分、あんな感じだよなー。だれかが、窓の外を見て言っていた。クラスのほとんどがうなずいていた。
そんなふうに、朝から日の光は遮られていて、蛍光灯の明かりは薄暗い教室の中だと頼りなく見えた。最後の教科の答案が回収された瞬間、なんとなく立ち込めていた不安感は、明るい開放感に吹き飛ばされたけれど。
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