油断は大得?!
課長は慣れない雰囲気に興奮したのか、ゆっくりというのは守ってくれたのだけど、思った以上に連れ回されてしまった。
私は踵に靴擦れが出来てしまったため、今は、会場を出た控え室の椅子に腰掛け、予め準備しておいた絆創膏で応急処置中だ。
やっと解放され、この後は歓談していいことになった。
帰る頃また落ち合う事になっている。
ヒールを脱ぎ、少し足を揉んだ。
……こんなモノ、拷問と同じよね。爪先にだって負荷が掛かるし。
女性の美への探求は痛みや寒さとの戦いかな。
なんてブツブツ言ってた。
「お嬢さん、お一人ですか?」
頭上から声を掛けられた。……無視した。すると。
「聞こえなかったかな?英 美波さん」
仕方ない…。
聞き覚えのある…応えたくない声だったから返事をしなかったのに。無駄だとは思った。私と知って声をかけているのだから。
…でも、何故ここに居るのだろう。
「何か御用でしょうか?一之瀬 誉様」
「おっ、嬉しいな〜。名前、覚えてくれているんだ。誉って」
ちっ、誉は余計だったかな…。
「一人ではありません。パートナーと一緒です」
「知ってるよ?ずっと見てたからね。
一際目を引く綺麗な子が居るって、ヒソヒソ話してるのが聞こえてきたからね。まあ、そんなの聞かなくても、すぐ解ったけどね。
俺はお袋に連れて来られたんだけど、今は来て良かったと思ってる。
面倒臭いパーティーも、顔出してみるもんだなって思ったよ。
まさか、こんなところでまた会えるなんて。まさに“奇遇”だね」