心の中を開く鍵
「……どうも」

ボソリとぶっきらぼうな挨拶とも言えない彼の挨拶に、ギクシャクと頭を下げた。

「ど……どうも」

どうにも微妙な挨拶を交わし、観月さんが不思議そうな表情で首を傾げる。

「どなたですの?」

「高野商材の、マーケティング企画課の課長をなさっていらっしゃる高崎さん」

ビジネスライクに紹介をしたら、じろりと睨まれた。

「大学の先輩後輩だろう」

個人的にはね。でも、別にそんな個人的に紹介しなくても……。

「なんださっきのメール」

そう思っていたのに、いきなり個人的な事を言い始めたから、驚いて目を丸くする。

視界の片隅で観月さんが口元を押さえたのが見えた。
何故か期待するようなキラキラした目に慌てて手を振る。

「誤解しないでね。単に同窓会の断りメールしただけだから」

「いいんです。私、他の人探しますから」

「ちょ……っ」

彼女お得意の、うふふ笑いをしながら、社員入口に戻っていく姿を見送る。

えー……。あれは絶対に変なこと考えているよね~。

まぁ、ちょっと早合点なところが彼女だと言うか、直すべきところだと言うか。

今後の指導はどういう方針で行こうかな。

「……無視するな」

ちらっと翔梧を見てから、溜め息をつく。

「メールで連絡はしましたが、何か問題でもありましたでしょうか」

ちゃんとお返事したよ。
馬鹿丁寧すぎるくらい回りくどい文章を駆使して、まさしくビジネス的な断りメールを。

「問題はない。OB会の話は単なる口実だし」

爽やかに言われて、眉をひそめた。

「どうせ断ると思っていたからな。まさかフリーメールで返信してくるほど徹底しているとは思わなかったが」

「……私的な連絡に会社のアドレスは使えないでしょう」

なんなんだろう。そんなこと、わざわざ言いに来ることかな。
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