心の中を開く鍵
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仕事も終わった帰り道。

「今夜、ちょっとした集まりがあるのですが、山根さんも、ご一緒いたしませんか?」

社員入口で呼び止められ、綺麗に着飾った観月さんを爪先から頭まで眺める。

ピカピカのラインストーン入りのピンクのパンプス。ヒラリとした膝丈の白のスカート。それにピンクのボレロ。それから縦巻きロールまで行かないにしても、クリンクリンと綺麗に巻かれた髪の毛。

とっても上品に言っているけど、それは合コンとか、飲み会とかってことだよね?

「パス。引き立て役になるつもりはない」

サクッと断って、社員入口を出ると、観月さんも慌ててついてきた。

「私の服をお貸しします! 背丈も同じですし、大丈夫です!」

「そういう問題じゃないし! だいたい観月さんの服って、ヒラヒラ多いじゃない。嫌よ、そんなの」

「ヒラヒラはウケが良いんです! 一緒に恋人探ししましょうよ!」

「探すつもりはないから」

きっぱり言ったのに、観月さんは真面目な顔をして首を振る。

「お見合いかキャリア目指さないで、一緒に恋愛いたしましょう! いずれどちらかになるかもしれませんが、素敵な思い出になるかもしれません」

そんなことを言われても困るから。

「そんな思い出はいらないって。だいたい素敵な思い出になる“かもしれない”なんて不確かなものは遠慮したい」

ヒラヒラ片手を振ると、今度は必死の形相で詰め寄られた。

「今日は二対二なんですー。約束していた人にドタキャンされてしまったんですー」

「一回断れそんなもの! 断ってダメならそこまでの相手だ!」

「俺もそう思う」

急に割り込んできた声に、観月さんと一緒に固まった。

恐る恐る振り返ると、そこにはカバンを持って、呆れたように腕組みしている高崎翔梧の姿が……。

神出鬼没とは、まさにこの事?
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