Satellite

4月7日

入学式。

それは体育館で執り行われた。


初めての環境に、少しどきどきしながら準備されたパイプ椅子に腰掛ける。

式の開始10分前にはもう座っているという優等生さに、自分でも少し自慢気になる。


座席は横に3列ずつ並べられていた。

わたしが座ってから少しして、わたしが3列の右側に座っているのに対し、左側に男子生徒が座った。

真ん中の席は空いている。

そして、式の開始3分前くらいにようやく隣の席に男子生徒が座った。




わたしはその男子生徒の顔を見てマジでビビった。

イケメンだったのだ。

それも爽やかスポーツマン系。

(わぁああぁぁああぁあぁぁああああ
こわいよぉぉぉおぉおぉぉぉおおぉおぉぉおぉ
イケメンだぁああぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあぁ)

極度の対人恐怖症(コミュ障)のわたしは本当にそう思った。

そしてそのイケメン君の特徴は、大きくてクリクリとしたパッチリ二重。

整った顔立ちと細くもシャープな輪郭。

スポーツ万能そうなツンツン短髪。

そして学ランが萌え袖化。

(なんだこいつは。なんでこんなにも女子ウケ要素しかないんだ。)

本気で思った。

隣の慣れないイケメンに、暫くの間(いろんな意味で)震えた。


そして時間が経ち、式が開始され順調に進む。

春の暖かい気温で、うとうとする。



「全員、起立」

号令が聞こえたとき、周りとワンテンポ遅れて立った。

…隣のイケメンと。



式が終わり、「シューズを脱いで待機」と指示があった。
だが、皆どうしたらよいものかと周りをキョロキョロし、脱いでいない。

わたしだけが脱いでいて浮いてるんじゃないか、と思い、隣のイケメンに

「体育館シューズ…、脱いでいいと思うよ」

と声をかけた。
彼は困った様子で

「う…うん。ありがとう…」

と答え、脱いだ。


これが、わたしたちの一番最初の会話だった。



それから、わたしたちは教室へと戻っていった。

わたしは一番後ろの席、かのイケメン君は一番前の席、と見事に引き裂かれてしまった。

その日は簡単なガイダンスで終わり、明日は始業式だぞと担任が言った。


まだ馴染んでいないクラスの雰囲気。


帰りの号令を出し、それぞれ個々に教室を出る。

かのイケメン君もまた、一番前の席だからか、すぐに教室を後にした。


その日は誰とも話さない、話せないまま、帰宅した。
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