イジワル同居人は御曹司!?
「えーと、何がどうしてこうなっちゃってる訳?」

歩は小首を傾げて尋ねる。

りゃそうだ。

部外者の兄が同僚を抱っこし、ギャルを引き攣れて突然エレベータへ乗ってきたら何事かと思うだろう。

「さ…藤田さんが業務中脚立から落下して腰を強打した。歩けないと言うので医務室に運んでいる最中だ」

奏さんは淡々と説明する。

「まぁ!」と大きく目を見開き歩は口元に手を当てる。

「大丈夫?紗英。気をしっかりね」

歩は心配そうに眉根を寄せる。

「ありがと」私は奏さんの腕の中で力なく笑う。

エレベータは医務室のある11階に到着した。

「兄さん、紗英をよろしくね」

歩が心配そうに顔を曇らせ声を掛けると「大丈夫だ」と言って、奏さんはこっくり頷いた。

「お騒がせしました」

奏さんは会長にも折り目ただしく一礼する。

「お大事に、藤田さん」

会長にまで労わられてしまった。名指しで。

本当に辞令が下るかもしれない。

ゆうぽんを先頭に私達はエレベーターをバタバタ降りる。
< 107 / 328 >

この作品をシェア

pagetop