イジワル同居人は御曹司!?
野良猫の名は紗英というらしい。

火事で家が焼けてこの家に住み着いたようだ。

しかし、残念ながら、俺は猫が嫌いである。

「そんな!殺生な!」

追っ払おうとすると、紗英は悲壮感を漂わせ、目を大きく見開いた。

パッと見は色っぽくていい女だと思ったが口を開くと台無しだ。

不意にポケットに入れたスマートフォンが振動する。

開いてみると妹からメールが届いていた。

『おかえりなさい。プレゼントは気に入ってもらえた?』

テーブルの向かいに座った紗英はチラチラと俺の様子伺っている。

勝気そうに見えるだけに、その不安そうな表情に嗜虐心がそそられる。

俺は『悪くない』と一言だけ返信した。


気まぐれで猫を飼ってみようと思った。

仕事は忙しく家の事に手を付けられそうもない。

どのみち家政婦を雇うつもりだったので都合もいい。

◆◇◆◇◆


玄関のドアを開けると待ち構えていたかのようにリビングから紗英が姿を表す。

「おかえりなさい」

俺の姿を見て嬉しそうに頬を緩ませ出迎える。

その笑顔を見るとホッとして癒される。

なんて在り来たりな事を思ってしまうなんて、俺も随分疲れているのに違いない。

「…ただいま」

一人暮らしが長かったせいかこの台詞を言う時は未だに少し照れ臭い。
< 238 / 328 >

この作品をシェア

pagetop