イジワル同居人は御曹司!?
「食事は?」

「食べてない」

用意しますね、と言って紗英はパタパタと小走りでキッチンに向かう。

ふんわりと茶色い髪を結い上げたエプロン姿の紗英は悪くない、どころか、そそられるものがある。

後ろを振り返った時に覗く白いうなじに思わず目を奪われる。

…うなじを見て喜んでるなんて、中学生以下だな、俺は。

此処まで来ると末期だな、と思う。

好みの女と一つ屋根の下で暮らしているのに手を出せないとは、奔放な独身生活を送って来た俺にとっては拷問に近しいものがある。

「今日はグラタンです」

紗英がトレイに料理を載せて運んで来た。

「見れば解るが」

「気分を盛り上げたんじゃないですか。性悪メガネ」

俺のテンションは一気に下がる。

本当にこの女の口が悪くて良かった。

紗英は夕飯の支度を整えると冷蔵庫から缶ビールを取り出し、俺の向かいに座った。

「美味しいですか?」

「ふつう」

ありのままの感想を述べると、紗英はホッとしたようなガッカリしたような微妙な表情を浮かべる。

仕事が比較的早く終わった日には、紗英が晩酌をしながら夕飯に付き合うのが目下の習慣になりつつある。
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