イジワル同居人は御曹司!?
報われない想いが辛すぎて、私はあの家から逃げた。

奏さんの側にいても自分の想いは受け入れてもらえないし、他の誰かを見ることもきっと出来ない。

あのまま一緒にいたら、ドロッドロの鬱屈した想いが溜まっていって、他の女性と結婚!なんてなった日には、私は奏さんを刺すかもしれない。結構本気で。

『アラサー美人OLの歪んだ恋情!エリート同居人を刺殺!』

三面記事の小見出しを妄想した時、恐ろしくなり不動産屋へ駆け込んだ。

マレーシアで余生をエンジョイしている両親を悲しませる訳にはいかない。

…とはいったものの、今の私は抜け殻だ。

ゴロリと寝がえりを打つと、目から涙が溢れて畳に染みを作る。

今すぐにでもあの家に戻って奏さんに齧り付きたくなる。

ドレッサーの上に置かれた小瓶を手に取る。

蓋を開けるとふんわりと上品な柑橘系の香りがした。

奏さんの香り。

デパートのコスメフロアを通りがかった時に偶然この香水に出会った。

火事貧乏のうえ引っ越し貧乏で、ブランドコスメなんて手が出せなかったくせに、無意識のうち翌月一回払いでカードを切っていた。

奏さんに会いたくてたまらなくなると私はこの香水を嗅いで寂しさを紛らわす。

…はっきり言って変態行為だ。奏さんが知ったらドン引くだろう。

だけど奏さんが近くにいるみたいで不思議と気持ちが安らいで行く

いい具合に部屋が暖かくなって来て、私はウトウトと目を閉じる。

「かなでしゃん…」

小さく名前を呟いて私は眠りに落ちて行った。
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